世界自然遺産小笠原の秘密は「石門」にあった

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目次

「石門」ってどんなところ?

石門は、小笠原諸島母島にあるトレッキングコースで、ガイドなしでは入れない「原生に近い豊かな自然が残っている」場所です。石門は、国立公園の特別保護地域、林野庁の森林生態系保護地域、東京都と小笠原村で定める自然環境保全推進地域に指定されるなど多角的に保全されており、ユネスコの世界自然遺産に登録された貴重な自然を目の当たりにすることができます。

「石門」の自然を守るための自主ルール

石門では、自主ルールでガイド1人当たりの利用者は5名まで、利用期間は”希少なアカガシラカラスバトの繁殖を妨げないように”、10月~2月まで入山禁止期間です。

人一人がやっと通れるような幅の道で根っこを超えたり、ロープをつかんで上り下りしたり、倒れている木をくぐったりと、アドベンチャー感あふれるルートです。普段から山登りなどをされている健脚向けのコースになります。

土が流れてしまったり、斜面や段差が急だったりと、危険な箇所は入山禁止期間中に多くの人たちの手によって「近自然工法」という方法で整備されています。この工法は、現場にある材料で地形に合わせて自然になじむように施工する方法で、補修した後も目立ちません。さて、実際に歩いてみて何箇所気づくことができるでしょうか?

「石門」の特殊な地形「ラピエ」

小笠原は父島も母島も火山でできた島なので大部分が火山岩でできているのですが、石門は母島が形作られた約4400万年前より後の3850万年~3380万年以降にできた一番新しい地層です。海底が隆起して陸地となり、海中でできたサンゴ礁由来の石灰岩でできています。この石灰岩が雨水などによって長年浸食されてできたギザギザに尖った地形を「ラピエ」といい、父島のすぐそばにある南島にも同じ地形が見られます。

カルスト性の地質であるということと、一度も大陸と繋がったことのない海洋性の島であること、そして3000万年以上前にできた島という歴史の長い島であることから、ここにしか生えていない植物がいくつかあり、固有種のカタツムリもたくさん生息しています。

「石門」だけに生息している小笠原固有種

正確に言うと、「石門」以外にも生息しているものもあるのですが、石門コース以外では見ることが少ない生き物がたくさんいます。

  • オガサワラオカモノアラガイ

天敵のいない母島の環境で、進化の過程で殻を退化させたカタツムリです。湿度の高い母島では、殻を持つ必要がなく、植物の葉と茎の間の狭い空間に入り込むために殻を退化させたと考えられています。10月頃に行くと大きな個体に会えますが、3月ころでは生まれたての小さな個体しか見れず、可愛いですが、写真には撮りにくいです。

水饅頭みたいww

  • テンスジオカモノアラガイ
https://www.instagram.com/p/CHpwDtwFrdL/

オガサワラオカモノアラガイは、完全に殻を退化させていますが、テンスジオカモノアラガイは、殻がかなり小さくなっています。

  • 「セキモンノキ」
https://www.instagram.com/p/COKUjC1DAiO/

目立つ木ではないので、ガイドさんに教えてもらわないと見逃してしまいます。3月~4月ごろ小さな丸い花をつけます。

  • 「セキモンウライソウ」
https://www.instagram.com/p/BjuMD5lnaIv/

「ウライ」は台湾北部の烏來(ウーライ)に由来しています。これは石灰岩地にだけ生えるちょっと変わった植物です。石門近くのラピエの一部にだけ咲いています。

  • タイヨウフウトウカズラ

大きな葉と書いてタイヨウと読むこの大きな葉を持つコショウ科のこの植物は、遺伝子が非常に弱くなっており、近い将来絶滅するだろうと言われています。自生個体は、母島の石門地区に1株が生育しているのみで、外来種のネズミやカタツムリからの食害を防ぐためにフェンスで覆われています。石門地区に東京大学附属植物園が植え戻しを行った個体が数十株生育しています。

  • シマホルトノキ

木の幹に瘤がたくさんできる小笠原の固有種の木です。父島にも生えているのですが、これほどたくさんの瘤はついていません。

ちなみに、石門の名前の由来である上の写真の地形は、石門ルート内では見れませんし、ははじま丸からも見れません…残念。

小笠原で進化したカタツムリは何がすごいの?

小笠原諸島は、東洋のガラパゴスと言われています。ガラパゴス諸島で、ダーウィンフィンチと言う鳥の嘴の微妙な進化の違いから、ダーウィンが進化論を構想したと言われていますが、小笠原諸島の母島に生息しているカタツムリも似たような進化をしています。

小笠原では、海によって隔たれた小さな島において、独自の進化を遂げた多くの固有の生き物やそれらが織りなす生態系を見ることができます。 小さな海洋島における生物の進化を示す典型的な見本として、世界的な価値を持つことが認められ、ユネスコの世界自然遺産に登録されることになりました。

元々同じ種類の生き物が環境の違いによってそこに適した形や色へと変化し、多統計にわかれることを「適応放散」といいます。小笠原においても、小笠原固有種のカタツムリの種の中で、この「適応放散」を見ることができます。化石(貝殻)やいま生きている種類を比較することにより、進化の歴史が分かります。

小笠原のカタツムリのうち、カタマイマイというグループは、木の上で暮らすものは淡い色の、土の上で暮らすものは暗い色の殻を持つなど、適応放散によっていろいろな種類に進化してきました。

小笠原諸島は多くの島々がありますが、そのそれぞれの島で独自に進化したカタツムリが生息しています。例えば、上から見ていくと、「ヒメカタマイマイ」が2回表記されていますが、同じ母島でしかも北部に生息している「ヒメカタマイマイ」でも、形状が少し異なり、またDNAの違いがあると言うことがわかっています。これはどういうことなのでしょう。

進化論の系統ネットワークについての講義を京都大学のYou-Tubeチャンネルが掲載していました。詳しく知りたい方は、見てみてください。かなり学術的ですが、わかりやすく説明されています。

小笠原では進化の途中のカタツムリを見ることができる

同じ種なのにDNAが違うということは、それは遺伝子に何かしらの変化が起きているということです。つまり、進化の途中。進化は、突然変異から起きるのですが、突然変異が起こった個体がうまく環境に馴染めた正解の進化であれば、その突然変異は、もはや突然変異ではなく、進化として優性遺伝されていきます。もしその変化がうまく環境に馴染めない正解でない突然変異でなければ、その個体自体が環境に対応できず死んでしまう、もしくはその変化は次の世代に受け継がれないか、受け継がれたとしても環境に対応しきれず絶滅していく。南島で今でも化石を見ることのできる絶滅してしまったヒラベソカタマイマイは、うまく突然変異を紡いでいけず、絶滅した可能性があります。

カタツムリという1年性の生き物であるからこそ、歴史の浅い小笠原諸島で今現在進化の様子を目の当たりにすることができるのです。

進化について興味を持った人は、ダーウィンの「種の起源」を読んでみることをおすすめします。読みやすくなっているバージョンもあります。これを読んでから小笠原に行けば何倍も小笠原が楽しめるはずです!!

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小笠原の海にもたくさんの固有種が生息しています。

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