ユネスコ文化遺産のある離島まとめ

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ユネスコの世界遺産は、世界的に重要な遺跡や自然が残っている場所で、観光スポットとしても人気です。離島は、自然豊かなイメージがあり、自然遺産としての登録も多いですが、離島には、離島独自の文化が育まれていることが多く、文化遺産としての登録も少なくありません。

ユネスコの世界文化遺産に登録されている海外の離島40島をまとめてみました。景観も美しく、その歴史は独特で非常に興味深い遺産ばかりです。

目次

文化遺産の離島①メインランド島(イギリス)

オークニー諸島の新石器時代遺跡中心地」として1999年に登録されました。オークニー諸島は、イギリス本島から北に10kmほど離れた沖合に70程の島からなり、新石器時代の墳墓やストーンサークルなどが数多く残っています。中でも、オークニー諸島最大の島・メインランドが紀元前3100〜紀元前2000年ころに作られたものが残っており、最も見応えがあります。

紀元前2700年ごろに作られたメイズ・ホウというお茶碗型の墳墓や、その近くにある「リング・オブ・ブロッカー」と「ストーンズ・オブ・ステネス」と呼ばれる二つのストーンサークル、そしてイギリス最古の村とされる住居跡「スカラ・ブラエ」や墳墓が見つかっています。「スカラ・ブラエ」の一部の住居の下部には排水設備もあり、世界最古の屋内トイレとも考えられています。

文化遺産の離島②バミューダ島(イギリス)

北大西洋上にあるイギリス領バミューダ諸島にあるセントジョージは、イギリスの最も初期の植民地都市で、「バミューダ諸島の歴史的都市セント・ジョージ」として登録されました。

1612年に建設され、今でも街路や石造の家が残っています。中でも、18世紀当時の家具が残された邸宅タッカーハウスや1713年に再建された西半球最古のイギリス国教会の教会セント・ピーターズ教会などが有名です。また、海岸に残る一連の要塞群からは、17〜20世紀のイギリス軍事技術の発展を学ぶことができます。

文化遺産の離島③テルセイラ島(ポルトガル)

ポルトガルの西部に位置するアゾレス諸島のうちの一つテルセイラ島の港町アングラ・ド・エロイズモは、15世紀前半にポルトガルの植民地となり、ヨーロッパと新大陸、アフリカ西海岸との航路の中継地として発展し、「アゾレス諸島の港町アングラ・ド・エロイズモ」として登録されています。

アングラは、港湾として発達しましたが、列強諸国や海賊の襲撃に備えて高い防衛能力を必要とし、16世紀末に建設されたサン・セバスチャン要塞や16〜17世紀のスペイン支配時代に建設されたサン・フェリペ要塞などを始めとする多くの要塞が造られました。

また、16世紀に造られたデントール・デ・セ大聖堂などは、ルネサンス様式の建築遺産として貴重です。

文化遺産の離島④ピーコ島(ポルトガル)
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ポルトガルの首都リスボンから西へ1500kmの大西洋上にあるアゾレス諸島の中で2番目に大きい火山島がピーコ島です。ピーコ島では、15世紀に入植者が作ったワイン用ブドウ畑が広がっており、作物を風や海水から守るために直線上の石壁が作られ、長方形に耕地や住居が分けられてます。2004年に「ピーコ島のブドウ園文化の景観」として登録されました。

文化遺産の離島⑤キュラソー島(オランダ)

カリブ海に浮かぶキュラソー島の港町ウィレムスタットは、オランダ西インド会社によって築かれ「ウィレムスタットの歴史地区」として登録されました。

キュラソー島の東にあるセント・アナ・ベイという入江にアムステルダム要塞が建設され、18世紀以降この西側に、アムステルダムを模した町が形成されていきました。18世紀以降の赤、黄、青、緑などの壁に曲線を用いた切妻屋根と回廊を持つのが特徴のクラサオ・バロック様式の建物やクィーンエンマ橋が一見の価値ありです。

文化遺産の離島⑥ソルヴェツキー諸島(ロシア)
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ロシアの最北西部の白海に浮かぶソロヴェツキー諸島には、15世紀にロシア正教会によって主島にソロヴェツキー修道院が建設され、修道士たちが道路や水路を作り、街づくりに尽力しました。

ノヴゴロド様式のアサンプション教会や19世紀のセント・ニコラウス教会が残っています。かつてソロヴェツキー諸島が北ロシアの経済、文化、軍事の中心であったことを示しています。

文化遺産の離島⑦シェラン島(デンマーク)
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デンマークの首都コペンハーゲンがあるシェラン島北部の半島に位置する3か所の森林および関連建造物群は、パル・フォルス式狩猟(騎乗して猟犬を伴う狩猟)に興じたデンマーク王らのために17世紀後半から18世紀初頭に設計されたバロック様式の狩猟景観をよく保存しており、「シェラン島北部のパル・フォルス式狩猟の景観」として2015年に世界遺産に登録されました。

ストア・ディアヘーヴェ (Store Dyrehave)、グリブスコウ (Gribskov)、イェーヤスボー樹林 / イェーヤスボー・ディアヘーヴェ (Jægersborg Dyrehave/Jægersborg Hegn) の3つの主要地域に分かれており、これらの狩猟場は、バロック期の文化的交流と、時代の思想を反映した狩猟場の重要な発展段階を伝えています。

中世の当時、デンマーク王家、教会、貴族は半島丘陵部の森林や起伏のある農地に所領や狩場を有していました。1536年に国王フレゼリク2世はカトリック教会に属していた所領を召し上げ、1560年からは、様々な所領を併呑して、シェラン島北部の半島に広大な王家用の狩場を作っていきました。フランスのサン=ジェルマン=アン=レーの森林で、パル・フォルス式狩猟を体験したことのある国王クリスチャン5世は、イングランドから猟犬と猟犬係を連れてきて、1670年以降、軍に命じてIbstrup城周辺にパル・フォルス式狩猟のための鹿公園を作らせ、城をイェーヤスボー(猟師の城)、周辺をイェーヤスボー・ディアヘーヴェ(ディアヘーヴェは鹿公園の意味)と改名しました。

パル・フォルス式狩猟のために景観を横切る道路群が作られ、これによって君主の絶対的な権力を示すための基盤が作られました。シェラン島北部の半島全体は、個々の広場に囲まれた星状の道路群に基づいて形成されており、石の標柱が、どの道がどの星の中心に向かっているのか、あるいはどの星の中心から伸びているのかを示しています。このデンマークの直行する幾何学的道路網は、フランスやドイツで用いられていた星型道路網を改良されたもので、森のどの部分にも等しくアクセスできるようになっています。

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イェーヤスボーの狩場は星型道路網を含みませんが、その代わりに、王家の狩猟小屋の存在に基盤を置いており、1736年にその狩猟小屋はバロック様式で再建され、Ermitageslottetと呼ばれるようになりました。

文化遺産の離島⑧ライヒェナウ(ドイツ)

コンスタンツ地方のボーデン湖には、ライヒェナウ島は、本土と人工の道で繋がれた4.3 km²の面積の島です。9〜11世紀にかけて建設された3つの修道院と聖堂が残り、「僧院の島ライヒェナウ」として2000年に登録されました。

修道院内には神学校や写本のための写字室、工房などの施設が建てられ、布教だけではなくヨーロッパの芸術・文化の発信地的役割も務めました。

9世紀末創建の聖ゲオルク聖堂の内部壁面には、10〜11世紀に描かれたキリストの8つの奇跡を描くフレスコ画があります。

聖ペテロ・パウロ修道院の壁面に描かれたフレスコ画「キリストの栄光」は、ドイツにおける初期ロマネスク美術の傑作とされています。

文化遺産の離島⑨ヴェガオヤン-ヴェガ群島(ノルウェー)

ノルウェー中部西海岸には、6500もの島々があり、ヴェガ群島と呼ばれています。その中のヴェガエイヤン島を中心とした数十の島では、厳しい自然環境の中で1500年以上前から漁業や農業が営まれ、漁村や波止場、灯台、ケワタガモの飼育場(羽毛の売買が9世紀からのヴェガ群島の重要な産業)や倉庫、農地などがあります。その自然に溶け込んだ文化遺産が評価され、登録されました。

文化遺産の離島⑩キージ島(ロシア)
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ロシアとフィンランドの国境近くのカレリア地方にあるオネガ湖上には、 5 km²のキージ島が浮かんでいます。ポゴーストと呼ばれる教会や墓地のある集落には、釘を用いず、複雑な木組と装飾によって建てられた美しい木造教会群があり、「キージ島の木造教会と集落」として1990年に登録されました。キージ島の職人たちの伝統的な建築技術を今に伝えています。

12世紀ごろからこの島に入植したロシア人と先住民が同化し、先住民の神聖な場所にロシア正教の教会が建てられました。

キージ島には教会、礼拝堂、鐘楼など12の宗教施設と、後に移築された農家、風車小屋、浴場、道標などロシアの伝統的な木造建築が保存されています。中でも、16世紀に建てられたプレオブラジェンスカヤ教会は、落雷により1690年に焼失し、1714年に再建されましたが、ロシア正教の十字架を頂く葱坊主型ドームが22も配されており、光加減によって銀色に輝き、とても美しいです。

当初、この葱坊主ドームは一つしかありませんでしたが、キリスト教の四使徒の象徴である4つの小ドームが作られて以降、数が増やされていきました。天井内部には多彩な彩色がなされ、祭室前は美しいイコンで装飾されています。

教会の南側には、主ドームを囲む8つの小ドームを持つポクロフスカヤ教会がたち、二つの教会の間には鐘楼があります。

文化遺産のある離島⑪ロベン島(南アフリカ)
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南アフリカの都市ケープタウンの北およそ11kmの沖合に浮かぶロベン島は、南アフリカで初めて世界遺産に登録された文化遺産です。人種差別や人権抑圧の悲惨さ、そしてその苦難を乗り越え、民主主義と自由を勝ち取った歴史を伝える重要な遺構が残っています。

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ロベン島の周囲の海流は激しく、人力で渡ることは難しかったため、17世紀ごろからオランダやイギリスによって、主に犯罪者を隔離するための施設が作られました。その後、軍事訓練などにも使われましたが、1948年に南アフリカでアパルトヘイトが法制化されると、反対する政治犯を収監する刑務所として使用されることになりました。1991年までにロベン島には、3000人を超える黒人活動家、白人の軍人犯罪者などが収監され、ネルソン・マンデラも政治犯として約20年間投獄されていました。

1996年、監獄島としての役割を終え、翌年からは南アフリカの芸術・科学・文化・技術省の管理下に置かれ、博物館となりました。島内には、二重の柵と高さ約5mの石壁に囲まれた刑務所をはじめ、医療管理者の家、聖堂、灯台などが残されており、元看守や元囚人が案内役を務めています。

また、ロベン島では、南アフリカの国獣であるスプリングボックや、ジャッカスペンギンなど様々な生物も生息しています。

文化遺産の離島⑫パルマリア島、ティーノ島、ティネット島(イタリア)
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パルマリア島、ティーノ島、ティネット島を含む、イタリア半島北西部、リグリア海沿岸部では、12世紀にポルトヴェネーレの高台に造営されたサン・ロレンツォ聖堂をはじめとするカラフルな住宅の立つ集落や港などにおける優れた文化的景観と、軍港ラ・スペツィアに関連した軍事遺跡や、考古学的な発見をもたらした洞窟などが認められ、「ポルトヴェネーレ、チンクエ・テッレ及び小島群」として世界遺産に登録されました。チンクエ・テッレとは「5つの土地」という意味で、①モンテロッソ・アル・マーレ (Monterosso al Mare)②ヴェルナッツァ (Vernazza)③コルニリア (Corniglia)④マナローラ (Manarola)⑤リオマッジョーレ (Riomaggiore) の5つの漁村から成り、険しい斜面にはブドウなどの段々畑が広がり、「リヴィエラの真珠」とも呼ばれています。

パルマリア島は、面積は 1.89 km2で、同諸島最大の島、ラ・スペツィア湾最大の島であるとともに、リグリア州最大の島です。数百mの間隔をおいて、南にティーノ島、ティネット島が浮かんでいます。北東にはスコラ島があり、海岸防衛のためにスコラ塔 が築かれています。ティーノ島・ティネット島とともにリグリア海とティレニア海の境界となっています。

パルマリア島の外海(リグリア海)に面した西海岸は、海に向かってせり出す高い崖が特徴的で、多くの洞窟があります。これらの洞窟へは陸上からの到達は困難ですが、唯一ロープで降りていける「鳩の洞窟」は、ラ・スペツィア湾周辺地域の考古学調査のうえで非常に重要な発見をもたらした場所となっています。更新世の動物(シャモア(カモシカ属の一種)やシロフクロウ)の化石化した骨や5000年前に人間を埋葬した跡も見つかっています。

シャモア(https://www.instagram.com/p/CJ7Y65LBp92/)

かつては軍用地であり、カヴール要塞(パルマリア要塞)、ウンベルト1世要塞、現在は環境教育センターとして使われている砲台、第二次世界大戦時には軍事刑務所として用いられた塔、第二次世界大戦時に島の各所に築かれたバンカー、廃棄された沿岸砲や対空砲などが残っています。島の南部のポッツァーレにある採石場跡は、かつては貴重な黒大理石が採掘された場所で、石の運搬に用いられたクレーンなどの工機や、労働者の住居跡が残っています。

ティーノ島には、中世の修道院遺跡があります。

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