離島に住んでいる高齢者は、昔から島に住み続けている人が多く、思い入れがあり、知り合いが多い場所で最期までいたい、と願っている人が大半です。
しかし、離島には、十分な医療が整っているとはいえず、医療体制に不安を感じている人もいます。
できる限り最期まで島に住み、これまでと同じ生活を続けられるように要介護認定の人には、個別機能訓練を行い、要支援認定の人には集団機能訓練を行おうと計画書やマニュアルを制作しました。

目次
ゼロからの個別機能訓練①対象者の選定
個別機能訓練を導入しようとしたのは、ある高齢の利用者(Aさん)の歩行能力が徐々に低下してきており、その家族が心配してデイサービス内でできる限り運動をしてほしいと希望があったことから始まりました。
最初は、個別機能訓練ではなく、単に歩行訓練として午前と午後に一回ずつ手すりや平行棒を用いて10m程度歩くというものでした。
最初のうちはそれで歩行機能がある程度保たれていましたが、徐々に膝折れが目立つようになり、転倒のリスクが明らかに上がってきていました。
そこで、スムーズな立ち上がりと足運びを狙って、歩行訓練前に車椅子で足踏みをしてもらうことにすると、歩行訓練がスムーズに行えるようになっていました。
一方、食事面で、食事にかかる時間が長くなってしまっていることや体幹が左に傾いてしまうことが顕著に現れていました。
これらを踏まえて、生活機能向上のために個別機能訓練を導入すれば、デイサービス利用者全体に大きな利益があると考え、施設での個別機能訓練を導入することにしました。その対象者として、家族の希望が大きかったAさんを選定しました。
実際に個別機能訓練を行う前に、筋力増強の指標として、MMT(徒手筋力テスト)を導入し、測定しました。

ゼロからの個別機能訓練②個別機能訓練計画書の作成
まずとりかかったのは、個別機能訓練計画書の作成です。ネット上から個別機能訓練計画書をダウンロードし、それを転用しました。

上の書式を元にして制作しましたが、独自に変更した点もあります。
変更点①「短期目標」の欄を複数段に
「短期目標」の欄を複数段にすることで、それぞれの達成の有無をわかりやすく記入できるようにしました。
変更点②「個別機能訓練項目」の時間・主な実施者を消去し、メニュー詳細を記入できるように
個別機能訓練には、ⅠとⅡがあるのですが、加算をとる場合、Ⅱをするのは、機能訓練指導員(看護師/准看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師・鍼灸師)でなければなりません。なので、主な実施者の欄が作成されているのだと思いますが、わたしの所属している施設では、加算を取る予定がないので、主な実施者を消しました。
また、「時間」ではなく、それぞれのメニュー内の回数でカウントしようということで、「時間」も消去しました。
「主な実施者」と「時間」を消去した代わりに、実施する「メニュー詳細」を記入できるようにしました。
変更点③「利用者本人・家族等がサービス利用時以外に実施すること」と「特記事項」の消去
この欄に関しては、「Ⅰ 利用者の基本情報」の欄に記載できると考え、消去しました。
ゼロからの個別機能訓練③個別機能訓練のメニュー作成

個別機能訓練のメニューとしては、
①上肢筋力増強訓練:指先の動きや握力を含む
②下肢筋力増強訓練:歩行訓練や足上げなど
③関節可動域訓練
④嚥下機能訓練:発声練習や肩甲骨、首などの運動
⑤生活機能訓練:洗身動作や洗濯物を干す動作など
⑥認知症予防訓練:足し算や掛け算などの計算
の6つを用意しました。それぞれの詳細なメニューはネットや雑誌を参考に、現在の利用者ができそうなものをピックアップし、通し番号をつけました。通し番号をつけることで、個別機能訓練計画書にメニュー詳細をわかりやすく記載することができます。また、個別機能訓練実施表に何をしたかを簡単に記録することができます。
そして、作成したメニュー表には写真やイラストを左側に、右側に運動をする際の注意事項や方法、回数や秒数を記載しました。
ゼロからの個別機能訓練④個別機能訓練実施表
個別機能訓練のどんな内容を行ったかを記録する必要があるため、個別機能訓練実施表を作成しました。

項目としては、
・メニュー内容:大枠の機能訓練の内容と詳細メニューの番号
全てを行う必要はなく、利用者の疲労度や集団体操の時間に行った内容は省略することも可能としました。数字に◯をつけて行った内容が分かるようにしました。午前、午後両方行った場合には、二重◯を付けて、単純に記録できるように工夫しました。
例)上肢筋力-1 , 2 ,3
・時間とサイン
大きく午前と午後にわけ、印を押すことで誰がしたかを記録できるようにしました。
例)AM / PM
ゼロからの個別機能訓練⑤要支援の利用者への個別機能訓練の応用

要介護の人には、一人ずつまず看護師が対応して個別機能訓練を行えるよう調整を行い、そのあと介護士でも行えるように勉強会を行っていく予定ですが、要支援の利用者は多く、身体の機能レベルがそれほど変わらないので、生活機能訓練を中心としたメニューを全員で体操の時間に行うようにしました。
もちろん、それぞれの利用者にはこの動きが心配、というポイントもあるので、その運動を取り込み、全員で行う体操の中で機能訓練を行う、つまり集団で個別機能訓練を行うことにしました。
ゼロからの個別機能訓練⑥個別機能訓練のマニュアル作成
一定の個別機能訓練のラインができたところで、個別機能訓練のマニュアルを作成しました。マニュアルを先に作るべきだろ、という声もあるかと思いますが、個別機能訓練をすぐに必要とする利用者がいたこと、そして現場の状況に沿った実用的なマニュアルにしたかったので、ある程度個別機能訓練の形が出来上がってから作成しました。
・個別機能訓練とはどういうものなのか
・個別機能訓練ⅠとⅡの違い
・個別訓練の対象者について
・個別機能訓練計画書作成の説明
・メニュー実施時の注意事項
・短期目標、長期目標の評価方法
などを記載しました。