世界自然遺産登録決定!「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」

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「 奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」は、2021年7月26日に 奄美群島に属する奄美大島、徳之島、沖縄島の北部、西表島の 4つの地域を「 連続性のある資産」として、世界自然遺産に登録されました。

目次

世界自然遺産に登録された理由

大陸からの隔離期間の異なる中琉球と南琉球では、独自に生物の進化・種分化が起き、それによって生まれた固有種の重要な生息地となっている点が評価されました。

登録された奄美大島、徳之島、沖縄島北部、西表島はいずれも有人島であり、固有種・希少種等が生息・生育する自然資源を活用した文化や産業が育まれてきたことも特徴の一つとして捉えられています。

登録地域に生息する希少な生物

推薦地の在来種は維管束植物1,790種(亜種・変種・雑種を含む、10%にあたる180種が固有種)、陸生哺乳類22 種、鳥類 394 種、陸生爬虫類 36 種、両生類 21 種、陸水性魚類 266 種、昆虫類 6,148 種、 淡水甲殻十脚類 47 種の生物が確認されています。そのうち絶滅危惧種は 86 種にのぼり、希少種を含む多様な生物にとってかけがえのない生育・生息地です。

陸生哺乳類に関して、生息している22 種のうち、アマミノクロウサギやケナガネズミなど 13 種 (59%)が固有種で、イリオモテヤマネコなど固有亜種とされるものを含めると亜種は23種(固有亜種は18種(78%))います。

鳥類に関しては、日本産鳥類633 種のうちの 62%に当たる394 種の在来鳥類が生息しており、そのうち固有種は5種類です(日本固有の鳥類は 11 種)。

陸生爬虫類の日本に生息する陸生爬虫類の50%にあたる 36 種が生息しており、そのうち23 種(64%)が固有種(10種が亜種)です。また、両生類は、日本に生息する両生類の30%にあたる 21 種が生息しており、 そのうかち18種が固有種です。特に、純淡水域や陸域のみに生息するサワガニ科の全10種が固有種として発表されています。

登録地域の特異性

推薦地は、環境省、林野庁及び文部科学省により、各種の保護地域(国立公園、天然記念物、 森林生態系保護地域、国指定鳥獣保護区)に指定されており、進化の過程を示す生態系や豊かな生物多様性の保全が担保されています。

特異性①大陸性の豊富な植物相

中〜南琉球は、かつて大陸の一部であったため、大陸の豊富な植物相を引き継ぎ、その一部は隔離された環境下でこの地域だけに生き残り(遺存固有)、あるいは分化して新しい固有種を生み出した(新固有)と考えられています。

特異性②渡瀬線と蜂須賀線で分けられる生物相

区系生物地理学的には、哺乳類相、爬虫類相、両生類相ではトカラ海峡に「 渡瀬線」が、また鳥類相では慶良間海裂に「蜂須賀線」があり、大きく異なる動物相を有する地域の間にあって、地理的移行帯として位置づけられます。

特異性③中琉球と南琉球で異なる固有化パターン
ヤンバルクイナ:https://www.instagram.com/p/CCnisOEAUMW/

中琉球は、後期中新世(1163万年前~533万年前)に大陸から離れて離島化し、北・南琉球の陸生動物相から隔離されました。これによって、近隣地域では捕食者や競争相手の出現によって絶滅した種が、中琉球にだけ残りました。そのため、近隣の北琉球や南琉球には同種や同属種が分布せず、大陸等の遠く離れた地域にしか近縁種が分布しない遺存固有種となりました。特に非飛翔性の陸生動物にこのタイプが顕著に見られています。

南琉球の陸生動物相は、中琉球と後期中新世に分断されたのち、鮮新世の間(533 万年前~258 万年前)に、台湾及び大陸の陸生動物相からの隔離によって形成されたと考えられています。そのため、南琉球の動物相は、中琉球に近縁種が分布せず、極めて近縁な種・亜種が台湾や大陸の東部に見られます。

特異性④中琉球と南琉球での捕食者の有無の違い

中琉球の奄美大島、徳之島及び沖縄島北部では、食肉性の中・大型生物がもともといないか、長期間欠落しているため、遺存固有種を多く含む生物群集は、大型のヘビ類のハブを頂点とする生態系と、それに対する動物の適応的な進化が見られます。

イリオモテヤマネコ:https://www.instagram.com/p/B9qKDHIF8O9/

一方、南琉球の西表島では、推薦地で唯一の肉食獣であるイリオモテヤマネコが生息しており、生息環境や餌資源を著しく広げるなど、本来は中型食肉目が長期間生息できる規模とは 考えられない小規模な島嶼環境への適応的な進化が見られています。

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